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人気ファーマーズマーケットが目指すもの

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 オアフ島のカカアコ、カイルア、パールリッジ、ハレイワの4カ所で開催されているファーマーズマーケットのディレクター、パメラ・ボイヤーさん。毎週恒例のマーケットに加え、各地区でハワイ産食材に関するイベントも手がけている彼女に、ハワイのファーマーズマーケットのいま、そしてこれからのことについてお話を聞かせてもらいました。

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●パメラ・ボイヤー/Pamela Boyar
アメリカ・カリフォルニア州ロサンゼルス生まれ。
40年間ナチュラル&オーガニックフードビジネスに携わる。「ファームラバーズ・ファーマーズマーケット」企画ディレクター。


編集部:アロハ! いまやハワイで大人気のファーマーズマーケットですが、パメラさんとパートナーのアニー・スイートさんが代表を務める「ファームラバーズ・ファーマーズマーケット」は、オアフ島4カ所(カカアコ、パールリッジ、カイルア、ハレイワ)のマーケットを主催しているんですね。アメリカ本土出身のパメラさんが、そもそもハワイにやってきたきっかけとは何だったんでしょうか?

パメラ:発端は40年前にさかのぼります。野菜やフルーツに関するビジネスを始めたきっかけは、自分の食事をローフード(生もしくは低温調理の食事)に変えたこと。それから農作物に興味を持ち、南カリフォルニア中の農園を回ったりしているうちに、上質な素材を低コストで仕入れる方法が身につきました。まずはビバリーヒルズで宅配ジュース業からスタートし、数年後の1986年には有名レストランなどにオーガニック野菜を提供するようになりました。シェフのウルフギャング・パックは、今でも会うたびに「パメ〜ラ! ベジタブル・レディー!」と私のことを呼ぶんですよ(笑)。

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パメラさん(右)とパートナーのアニーさん(左)


編集部:アメリカン・セレブのオーガニック志向はその頃からスタートしていたんですね。

パメラ:その後テキサス州で当時オープンして間もなかった「ホールフーズ・マーケット」の第1号店で、地元農園の支援プログラムのリーダーとなりました。地元の農園ツアーを行って、お客さんに採れたての作物を試食してもらったりしているうちに、次第に新鮮な素材をもっと手軽に手に入れられたら、という要望が高まってきました。そしていよいよ初めてのファーマーズマーケットを、ホールフーズの前で開催することになったんです。あのときはたった13店の出店でしたが、それが今では100店以上集まる「サンセットバレー・ファーマーズマーケット」の原型となりました。



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大盛況のハレイワ・ファーマーズマーケット


編集部:アメリカ人の食に対する意識が変わる重要な時期に培ったノウハウを持って、ハワイへ来たんですね。

パメラ:2006年にバケーションでハワイに来たとき、今のパートナーであるアニーに出会い、すぐに移住を決めたんです。それから3年後に、私たちにとってハワイで初めてのファーマーズマーケットをハレイワで開催しました。どうして3年もかかったかと言うと、ハワイでのバケーション気分を満喫しちゃっていたのよ、海やプールでのんびり日焼けしたりね...というのは冗談で(笑)、当時まだ少なかったオアフ島各地のファーマーズマーケットに通いつめて、細かく調査していたんです。

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アラモアナ隣で開催されるカカアコ・ファーマーズマーケットは旅行者も行きやすい


編集部:パメラさんたちのハレイワ・ファーマーズマーケットが始まったのが2009年。ハワイではこの6年間で、ほかにも多くのファーマーズマーケットが増えましたよね。でもパメラさんが主催するのは現在4カ所...ということは、それ以外のものは、別の団体が主催しているんですか?

パメラ:そうなんです。さらに言うと、ファーマーズマーケットは主催団体によって、目指すものや趣旨が違うんです。じつはどのファーマーズマーケットでもオーガニック、もしくはハワイ産100%のものだけ扱っている、というわけではありません。私たちのマーケットでは、野菜やフルーツであればハワイ産であること、GMO(遺伝子組み換え)でないこと、フードやドリンクであれば人工調味料などを使用していないことが出店の条件になっています。また使用する食器類もバイオ・コンポスタブル(土壌還元素材)のみです。

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各マーケットの中心で開催される地元アーティストのライブ演奏



編集部:「ファーマーズマーケットで買ったもの=ハワイ産、オーガニック」ではないんですね。ショック! 参加店はどのようにして選定しているんですか?

パメラ:新しい農園からの出店要望があった場合、私たちは必ずその農園へ足を運び、実際に土壌や栽培方法などを目で確かめます。農薬やGMOに頼らない農産業は、そうでないことに比べて手間がかかりますが、最近はそれをあえて選ぶ若い農園経営者が増えてきているのです。そういう生産者を応援するために、たとえ手間であってもこのルールを守っています。

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パールリッジ・ファーマーズマーケットの焼きたてパン


編集部:ハワイでは若いファーマーが増えているんですね。それはなぜでしょうか。

パメラ:本来ハワイは農耕地が土地のほとんどを占めていました。やがて開発が進み、作物を作る土地が減り、輸入に頼り始めるようになってしまったのです。しかしハワイは近くの大陸から何千マイルも離れた島。日本もそうですが、アメリカ本土や外国からの輸入に頼ってばかりいたら、万が一の時にとても困る事態になってしまいます。そのことに危機感を持つ若い人々が、ハワイに「地産地消」を再び取り戻そうと奮起していることも、理由のひとつだと思います。

編集部:なるほど。最近では地元レストランでも「EAT LOCAL(イート・ローカル)」と言って、ハワイ産食材を使用したメニューを積極的に取り入れることが増えています。地元で採れた食材は新鮮で美味しいですしね。

パメラ:そうですね。またこれはアメリカ全体にも言えることですが、両親共働き、それも複数の仕事をかけ持ち、毎日の食事を手作りする余裕のない家庭が増えています。そのため、手軽なファストフードや輸入物の冷凍食品で育つ子どもがたくさんいます。私たちはそれをSAD(「サッド」、スタンダード・アメリカン・ダイエットの略)と呼んでいますが、本当にそのような食事で作られた体を持つ人々は、栄養に偏りが出るといった健康面だけでなく、自分のことを愛していない人がとても多いのです。悲しいことに...。そんな世代の若者だからこそ「食の安全」や「地産地消」の大切さを身をもって感じているのかもしれませんね。

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パールリッジ・ファーマーズマーケットでのキッズブース



編集部:それが農薬やGMOを使わない農業を目指すことに結びついているんですね。

パメラ:食べることは、生きること。今日食べるものが、明日のあなたを作るんです。ですから私たちは、人々が幸福感や喜びを感じられる「食」についてもっと知ってほしい、経験してほしいと願っています。たとえ各地域たった週一度の活動であっても、着実に地元の人々に根付いていくと信じています。そしてそれが理想的な「地産地消」を実現する一本の道となるはずです。

編集部:ハワイが大好きで、旅行で訪れる日本の人や、外国の人はどのようにこのハワイの地元農業をサポートすることができますか?

パメラ:ファーマーズマーケットへ来て、食事をしたりおみやげを購入してください。もちろん、ローカル産の素材を使っていることをポイントに選んでくださいね。それだけでハワイがもっと元気になる手助けになるんです。

編集部:ありがとうございました! 今週土曜日にカカアコ・ファーマーズマーケットで開催されるコーヒー・フェスティバルでも、ハワイ各島のコーヒー豆が大集合します。おいしいコーヒーを楽しみながら、同時に愛するハワイをサポートできるなんてうれしいですよね。編集部もイベント日を心待ちにしています!


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