アロハ!メグミです。
「アロハテーブル・ワイキキ」「グーフィー・カフェ&ダイン」「ヘブンリー・アイランド・ライブスタイル」という3つの異なるレストランをハワイで運営・成功させている「ZETTON, Inc. 」。3店とも、これまでハワイにありそうでなかった新しいコンセプトと、一度来たら必ずリピートしたくなる居心地の良さが特徴です。今回、ダイニング事業部長の菊地大輔さんに、抜きん出たブランディングの秘密や、飲食ビジネスで働くということなど、さまざまな角度からお話をお伺いしました。飲食業界で働きたい人、必見です!
●菊地大輔 Daisuke Kikuchi
ZETTON, INC 取締役 執行役員 ダイニング事業部長。
●株式会社ゼットン
1995年設立、カフェバー「ZETTON」を名古屋にオープン。以降、「アロハテーブル」をはじめとする各種飲食ブランドを立ち上げ、現在約80店舗を運営。ハワイでは、2009年「アロハテーブル・ワイキキ」をオープン以降、2013年「グーフィ・カフェ&ダイン」、2014年「ヘブンリー・アイランド・ライフスタイル」を次々と展開。ワイキキ界隈のグルメ&ダイニングを牽引する存在として注目を集めている。
www.zetton.co.jp
ハワイ勤務のチャンスも!ZETTON, INC求人情報はこちら>>
編集部:ゼットンを象徴する稲本健一社長の右腕的な存在だということで、菊地さんのお噂はハワイにも轟(とどろ)いています。まずは、菊地さんご自身についてお聞きしたいのですが、ゼットンで働きはじめたきっかけは何だったのでしょうか?
菊地:はじまりは13年前、東京での3店舗めを開店する際の、オープニングスタッフ募集の求人を見たのがきっかけです。広告に「時給850〜1700円」と書いてあって、すごい時給の幅があるんだなと思って。ちょうど海外から帰国したばかりで、てっとり早くお金を貯めて海外に戻りたいと考えていたので、「俺なら時給1700円もらえちゃうな!」と思って応募したんです。短絡的でしょう?(笑)。
編集部:創業メンバーじゃないんですね! しかもアルバイトからスタートしていたとは驚きです。
菊地:そうなんですよ。もともと学校を卒業してアパレル業界に就職したんですが、20代半ばで退職し、ワーキングホリデーで約1年間オーストラリアに滞在していたんです。そのままサーフトリップでバリなどを旅して、日本に帰ったのですが、すぐにまた海外に戻りたいと思っていたので、お金を稼ぐための一時的な帰国のつもりだったんですよ。オーストラリア滞在中にカフェで働いていたので、その経験も活かせるだろうと踏んで、時給1700円もらっちゃおう、と(笑)。
ところが、働くうちに、どんどんゼットンの作る飲食の楽しさにのめり込んでいって。気づいたら「社員にならないか?」というアプローチをいただくようになっていたんです。当時、自分は27〜28歳、飲食店でアルバイトをするにはちょっと高い年齢でもあるし、将来のことも考えなきゃいけない。でも海外にも戻りたいし...いやそもそも海外で何がしたいの? サーフィンだけやって暮らせるわけじゃないし...と、よく考えたら、海外に行く目的っていうのがぼんやりしてたことに気づいたんですね。
そんな中、ゼットンはいつか海外に進出する意向がある、ということを聞いて。「次に海外に行く時は、仕事で行くしかない」と思って、覚悟が決まりました。アルバイト入社から1年後に社員になり、お店でのホールサービス、店長、エリアマネージャーを経て、現在に至ります。海外業務に携わるようになったのは、入社から結局、10年後ぐらいです(笑)。
ピーク時は常に満席の「アロハテーブル・ワイキキ」店内&テラス席
編集部:まさに有言実行ですね。当時アルバイトの菊地さんが感じた「ゼットンが作る飲食の楽しさ」とは?
菊地:飲食は「人とつながる場」であり、その過程をみんなで作り上げていくことに、喜びを感じました。
編集部:それは、お客さんと接するのが楽しい、といった意味でしょうか?
菊地:いえ、接客業ですからお客様とのやりとりの楽しさはもちろんあるのですが、そこを超えた...その場の空気感をプロデュースしていくような感覚です。
外で食事をする時、何かテーマがあると思うんです。デートや記念日など恋人のシチュエーションもあれば、仕事帰りに仲間が親睦を深める飲み会だったり、接待、合コン、女子会...いろいろありますが、共通しているのが、人との関係性が存在していること。その「人とのつながり」を、より深く親密なものにするお手伝いができた時、とても大きなやり甲斐を感じました。
たとえば、「あのテーブルはデートだな」という時、過剰な接客はかえって邪魔になりますよね。控えめなアプローチの中で、男性が自然にレディーファーストができるように気を配ったり、女性がより美しく見えるように照明を調節したりもします。また、仲間との飲み会のテーブルには、場が盛り上がるように元気に切り込んでいきます。ビジネス接待のテーブルではゲスト側からサービスします。そのテーブルごとに、サービス感は違ってくるんですね。
お店を出るとき、デートのふたりが親密な空気になっていたり、飲み会が盛り上がっていたり、接待がうまくいった感じだったり...そんなお客様の姿を見て、「よっしゃ!」とフロアのみんなで喜ぶんです(笑)。その成功感って、たった一人のサーバーが作るものでもなければ、凄腕の料理人でもない、スタッフみんなで作るものなんです。
編集部:なるほど〜。「感じがいい接客」の裏には、そんな細かな気配りがあったんですね。
「アロハテーブル・ワイキキ」ではハワイアンフードを独自にアレンジしたバラエティ豊かなメニューが魅力
菊地:料理が美味しいのは、ある意味当然の条件ですよね。いつもよく言うのですが、「私たちは温度を扱っている」と。料理やドリンクの温度はもちろんですが、そのテーブルごとの温度感をどうやって大事にできるかが、接客のすべてだと思っています。
編集部:テーブルごとの温度感を大事にする...それって、難易度が高いと思うのですが。マニュアル的な接客では到底カバーできない領域ですよね。
菊地:そうですね。そういう意味でのマニュアルは、ゼットンにはないですね。もちろん入社してから最初は、最低限のことは教えますし、ロールプレイングもします。ですが、人を相手にしている以上、方程式はないので、人の輪の中に突っ込んでいくしかないんですよ。
あと、ゼットンはお店によって業態もさまざまなので、マニュアルが作れないというのもあります。基本、そのお店のローカル・ルールは店長や料理長が作っていくものだと考えています。まあ、ローカル・ルールといっても空気感のようなものなんですけどね。真ん中を貫く信念はあるけれど、ガチガチに縛るような規則はなく、わりと自由です。社員同士も下の名前で呼び合うことが多いですし、フランクですね。
編集部:年商100億円規模の会社としては、とてもフランクですね。
次は...
ゼットンのブランディング、お店づくりの真髄に迫る!
編集部:先ほど「お店によって業態もさまざま」というお話が出ましたが、お店ごとに異なるコンセプトを持っていて、とても独創的ですよね。そうした卓越したブランディングは、どのように生み出されているのでしょうか?
サーファーズハウスを彷彿とさせる「グーフィ・カフェ&ダイン」
菊地:まずは物件ありきですね。場所が決まってから、この街にまだなくて、でもみんなが求めているものは何だろう?と考えるんです。それも、あまり先を行き過ぎたらダメで、「いまのドンズバより少しだけ先」というものを、私たちなりの感性で練りあげていく感じなので、お店ごとに違ったブランドが出来上がります。業態開発から行うことができるのが、最大の強みなんです。
編集部:物件が先、というのはユニークですね。まず統一のブランドがあって、それを全国展開していくという考え方とは真逆ですね。
菊地:「店づくりは街づくり」がゼットンの基本理念。その街にとって価値あるお店を作っていくことに意味があると考えています。
創業20年で80店舗なので、飲食業としてはそれなりの規模ですが、ほかにもっと短期間で派手な展開をしている飲食ブランドはたくさんあります。うちは1軒ずつゼロから業態開発をするので、年間で5〜6店舗作るのがせいいっぱい。オープン後もブラッシュアップしていくので、お店が街に馴染んでブランドが確立するまでには1年ほど必要です。とにかく時間もコストもかかりますが、それが、ほかにはない私たちだけの価値を生み出していると思っています。
ハワイ産食材を使った「グーフィ」のメニューはどれもパンチのあるボリューム感。ワインや酒類との相性も抜群。
編集部:2013年に「グーフィー・カフェ&ダイン」、翌年の2014年に「ヘブンリー・アイランド・ライブスタイル」という2つのお店をワイキキにオープンしましたが、どちらも特徴的なお店ですよね。地元では「こんなオシャレなお店がハワイにできるとは!」と、ロコたちがこぞって来店し、かなり話題になりました。
菊地:「グーフィ」と「ヘブンリー」は、どちらもEat Local(地産地消)のコンセプトは同じなんです。でも決定的に違う感じがしませんか?
編集部:そうなんですよ! 最高に居心地が良いのは同じなのに、流れる空気感はじゃっかん違っていて、そのテーマというかブランディングについて今日はぜひお伺いしたいと思っていました。
菊地:端的に言うと、「グーフィ」はメンズ、「ヘブンリー」はレディースなんですよ。
「ヘブンリー・アイランド・ライフスタイル」店内。アイランドをテーマにしながらも、どこか都会的なセンスの良さもあり、抜群のおしゃれ感が漂う。
菊地:「グーフィ」では、メンズのサーファーの家をイメージしています。インテリアに使用しているウッドもダークな色合いで、クッションや壁掛けアートなどもメンズっぽい雰囲気。フードも「サーフィンから帰ってきてガッツリ食いたい男メシ」なので、カフクコーンのチャーハンやシンサトポークのグリル、といったガッツリ系メニューが多い。男がリラックスできて、仲間と酒を飲みながら楽しめるような空間、というのがテーマになっているんです。
一方、「ヘブンリー」は女子目線。
「世界中のアイランドを旅してきた女性が、ハワイに来てローカル食材に心惹かれてここに住む決心をした。そんな彼女が自宅に友だちを呼んで、みんなに食べさせたいローカル食材のメニュー」
というのが、ヘブンリーなんです。だから店内もウッディなんだけれども明るめで、インテリア小物も女子っぽいでしょう? ヘルシーさやオーガニックにこだわったメニューを意識しつつ、フォーなどのアジアンテイストも入ってきています。
編集部:うわ、すっごく納得です。「グーフィー」には、入り口に大きなサーフボードラックがあったり、フォルクスワーゲンの置物があったりと、男子目線。「ヘブンリー」では白壁に家具がオレンジや暖色系の差し色、壁のアートやクッションなんかも、いちいち女子っぽいですね。言われてみると、そうとしか考えられないくらい明確です。なんで気づかなかったんだろう、くやしい!(笑)。
「ヘブンリー」店内。壁のアートや小物、シャンデリアなど絶妙なラインの女子っぽさで統一されている。
菊地:とにかく「ヘブンリー」では女子目線を意識しました。作ってるのは男性スタッフばっかりなので、女子になりきって考えましたね(笑)。また、インスタグラムやフェイスブックなどのSNSにどんどんアップしてもらえるような、写真に撮りたくなるおしゃれ感も大事なポイントだと思っています。SNSはいわば「無料のクチコミ広告」ですから。
編集部:いまやビジネスを考える上でSNSは切り離せないツールになっていますよね。SNSにアップされた写真の、店内インテリアやお料理のプレゼンテーションが、ほんの一部しか切り取られていないのに、確実に「あ、これグーフィだ」「これはヘブンリーだ」と分かってしまう、それが本当にすごいことだと思います。「そのお店らしさ」が隅々にまで行き渡っていて。
菊地:ありがとうございます。ハワイでお店を作るって、まずは「満足いく建材がない」という壁にぶち当たるんですよ。「グーフィ」も「ヘブンリー」も、家具やインテリアの建材はほとんどハワイの外から取り寄せましたから。骨の折れる作業ですが、でも妥協したくないんです。
先ほど「まず物件ありき」というお話をしましたが、物件からテーマを見つけるのは、代表の稲本(健一氏)なんです。稲本がイメージした世界を、みんなでサービスや空間に落とし込み、形にしていきます。稲本自身がデザイナー出身なので、お店づくりに対するこだわりも非常に強いですし、妥協しないで追求していくエネルギーも、ものすごいんですよ。社内にはデザイナーもいるのですが、ブランディングの源泉は稲本が握っています。
編集部:稲本社長、やっぱりカリスマ的ですね。
「ヘブンリー」で実施中のパーティプランは6人以上からオーダー可能。料理7品+ドリンク2杯で1人$40とかなりお得。詳しくはこちら>>
次は...
「ストーリーを売る時代」、レストランの存在価値とは?
今後のワイキキ展開にも要注目!
編集部:お話を伺っていると、ゼットンのお店づくりには、その空間を楽しむ人の姿があって、ストーリーを感じさせます。
菊地:いまはもう、ただモノを売る時代じゃなくて、ストーリーを売る時代になっていますよね。ストーリーの重要性は常に意識しています。その流れもあって、日本では、公共事業にも参画しているんですよ。
菊地:国が作った建造物...お城や公園、美術館などがそうですが、その付帯施設としての飲食店に、我々ゼットンが入り、お店づくりをしています。大きな公園には売店がありますよね? その売店はあくまで公園のおまけ的なものですが、我々ゼットンが業態開発から入ることによって売店自体に価値を持たせ、「このお店があるから、あの公園に行きたい」という新しいベクトルの集客を獲得していくお手伝いをすることで、その公共施設の再生を図っていきます。
最近だと、「横浜マリンタワー」が象徴的ですね。横浜開港150周年を記念してリニューアルしたのですが、タワー内のホールやカフェ、バー、展望レストランと4つのお店をゼットンがオープンしました。
この横浜マリンタワーもそうなのですが、国の公共事業で建てられた施設はその場所自体に歴史的価値があったり、広々とした公園が併設されていたりと空間が贅沢に使われています。そんな魅力的なロケーションで、誰かと食事をするということ自体が、とても素敵なストーリーになると思いませんか?
編集部:もう、ぜったいに好きな人と行きたいですよね。
横浜・山下公園の緑を臨むイタリアンレストラン「ザ・バンド」。
菊地:また公共事業の良いところは、ほぼ半永久的になくならない建物だということ。この場所で初めてデートをした、家族と食事をした思い出の場所が、結婚して、子どもが生まれても、ずっとそこにあるという価値は、かけがえのないものです。その瞬間が楽しいだけでなく、ずっと語り継いでいけるストーリーが生まれます。
編集部:子どもと一緒にその公園に行って「ここはパパとママの思い出の場所なんだよ」って話すことができたら、とても素敵ですよね。
菊地:その通りです。ウエディングとの親和性も高いので、ウエディング事業も進めています。自分が挙式した場所がいつまでも無くならず、ずっと存在しているというのは大きな財産ですよね。歴史ある風光明媚なロケーションで、ゼットンの料理とサービスを駆使し、最高の一日を演出するお手伝いをしています。
編集部:常に新しいことを発信している感じですが、ハワイでの次の展開は?
菊地:2016年、ワイキキにあと2店舗オープンする予定です。
「小料理バル・ドメ」。北欧の漁港にある吹きさらしの建物をイメージした白壁が印象的。
編集部:それはビッグニュースですね!
菊地:同じ建物内に、1階は新しいタイプの日本食レストラン、2階はハワイの食材をふんだんに使ったカジュアルフレンチという、異なるスタイルの2店舗を計画中です。1階のお店は、日本で名古屋の名駅に国産・地産にこだわった「小料理バル・ドメ」というお店を運営しているのですが、このお店を下地にしつつ、ワイキキらしく発展させたものを考案中です。2階のほうも、「フランス料理」という高級な雰囲気ではなく、ちょっとしたステキ感はありつつもカジュアルに楽しめる方向性を考えています。
編集部:聞いているだけでワクワクしてきますね。それらのアイデアも、やはり「物件ありき」で生まれたのですか?
菊地:はい。ワイキキの中心地ながら、ほんの少しだけ横道に入った場所にある物件で...じつは1935年に建てられた歴史的指定建造物なんです。もともとは店舗用地として長く使われていたのですが、それを今回、飲食向けの店舗にリノベートして再び息吹を吹き込むという、かなり壮大なプロジェクトになっていまして、みんなで久々に燃えてます。
編集部:うわ、まさに価値ある建物の再生事業じゃないですか!
菊地:「店づくりは街づくり」の原点として、かなり気合が入ってます。個人的には行政との複雑なパーミットには毎回悩まされているので(苦笑)、意地でも良い店にしますよ。ゼットンのクリエイティブの力を結集した新しい店づくり、ぜひ楽しみにしていてください。
編集部:ぜひアロハストリートで取材に入らせてくださいね。今日はどうもありがとうございました!
今回お話をお伺いした菊地大輔さん(右)、「ヘブンリー・アイランド・ライフスタイル」店長のマイルドさん(左)。
■■■取材を終えて...■■■
ビジネスの成功を考える際、ともすると「効率化」「コスト削減」といった短期的に利益を追求する方向に行きがちな中、「じっくり時間をかけて、妥協せずに良いものを作る」というスタンスは、じつは勇気と体力がいることです。「業態開発から行い、店とともに街も成長させる」という考えにも感銘を受けました。企業もお店も、働く人も活き活きと良いエナジーにあふれているゼットン、今後も注目していきたいと思います!(メグミ)
ハワイ勤務のチャンスも!ZETTON, INC求人情報はこちら>>