アロハストリートの人気連載コラム「ピアニストCHIYOの徒然ダウンタウン日記」でもお馴染み、CHIYO FLYNN(チヨ・フリン)さんによる待望の新アルバム「Eternity(エタニティー)」が、2016年7月1日、発売開始となりました!
●CHIYO FLYNN "Eternity"/チヨ・フリン「エタニティー」
定価2,500円
アロハストリート・ショップ(横浜店・茅ヶ崎店)をはじめ、ウエブ通販「アロハストリート・セレクト」にて絶賛発売中!ハワイでは、ハイアット・リージェンシー・ワイキキ3階「スタジオ・リム・ハワイ」でも販売しています。
CHIYOさんの5年ぶりとなるフル・アルバム「エタニティー」は、ハワイ王朝最後の君主にして、偉大な音楽家としても知られるリリウオカラニ女王をオマージュした作品。収録全10曲のうち、9曲はリリウオカラニ女王が作られた楽曲をアレンジしたもの、そして残り1曲は女王に捧げる完全オリジナル曲です。
新アルバム「エタニティー」が生まれるまでの背景や制作秘話、そして音楽家リリウオカラニ女王について、ピアニストCHIYOさん、アルバムのコンセプターであるレイコ T ロジャースさんにお話をお伺いしました!
(聞き手・構成:編集部メグミ)
●CHIYO FLYNN/チヨ・フリン(左)
「CHIYO FLYNN PIANO STUDIO」代表。ウクレレプレイヤーのブルース・シマブクロをはじめとする有名ミュージシャンとのコラボレーションも多数手がける。CD「Lea by Chiyo & Friends」を含む3枚のアルバムをリリース。今回の「Eternity」は4枚めのアルバムとなる。
●Reiko T Rogers/レイコ T ロジャース(右)
「スタジオ・リム・ハワイ」代表。ラジオパーソナリティやイベントMC、講演活動のほか、マノアDNAをはじめローカル・ミュージシャンとの親交も厚く、多方面にて活躍中。イオラニ宮殿日本語ドーセント。
──CHIYOさん、レイコさん、アロハ! まずは今回のアルバム「エタニティ」を作ることとなった、きっかけをお教えいただけますか?
前回のアルバム「Lea」が2011年だったので、5年ぶりのアルバムとなったのですが、私としては、その間いろいろな試行錯誤をしつつも、なかなか「これだ!」というテーマに出会えなかったんです。
──なるほど。
そんな時、レイコさんから「リリウオカラニ女王をテーマにしたらどうか」というお話をいただいて。それまで全く考えたこともないテーマだったのですが、リリウオカラニ女王が実際にピアノを弾いていらしたことから、ぜひやりたいと思ったんです。
ちょうど2017年がリリウオカラニ女王の没後100周年にあたるのですが、ハワイに住んでいるエイリアン(外国人)の私としても、何か記念的なプロジェクトができないだろうか...と考えたとき、以前から親交のあったピアニストCHIYOさんのことが頭に浮かびました。
──私も最初にこのコンセプトを聞いたとき、「リリウオカラニ女王とCHIYOさんのピアノ...合う!!」と、興奮してしまいました(笑)。
じつは私、それまでリリウオカラニ女王のこと、もちろん知ってはいましたが、詳しい歴史的な背景までは知らなかったんですよね。
──私もです。そういう人が多いんじゃないでしょうか。
今回、イオラニ宮殿のドーセントでもあるレイコさんからいろいろ教えていただいて、「悲劇の女王」といった一面的なストーリーだけではない部分を感じることができたことも、大きかったんです。
──リリウオカラニ女王といえば、「ハワイ王朝最後の君主」として、時代に翻弄され、幽閉されたことなど、なにかと悲劇的に語られることが多いですが...。それとは違った面というのを、レイコさん、教えてもらえますか?
長くなりますがいいですか?
──ええと、ポイントだけ教えてもらってもいいですか?(笑)。
はい。では......私はリリウオカラニ女王を敬愛していて、研究をさせていただいているのですが、まずはじめに女王に惹かれたのは、音楽家としてすばらしい才能をお持ちだったという点なんです。
今回のアルバム製作にあたり、参考にしたリリウオカラニ女王に関する資料の数々。
みなさんもきっと聴いたことがある「アロハ・オエ」も、リリウオカラニ女王の作品です。
──ハワイといえばコレ!という代表的な曲ですよね。
楽譜に残っているものだけでも、160もの曲を作られています。楽譜に残していないものも含めると、もっと多かったでしょうね。
──多作家でもあった、と。
もともとハワイの音楽は打楽器が中心で、メロディを奏でるような鍵盤楽器や弦楽器は、後年になってから宣教師によって持ち込まれました。女王がご存命の当時、メロディを中心とした音楽というのは、とても斬新だったはずで、そんな環境下でこれだけの曲を残した女王は本当に偉大な才能をお持ちだったのだと思います。
「ONIPAA」はリリウオカラニ女王のモットーで、「ぶれない自分」の意。
また、女王はたくさんのジャーナル(手記)も残されているのですが、その手記と楽曲を合わせて読み解いていくと、一曲一曲の中に、楽しいことも悲しいことも、さまざまな思いを織り込んで作曲されていることがわかったんです。
──楽曲が、当時の出来事や女王の思いとリンクしている...と。
はい。女性として共感や感銘を覚える部分が、とても多いんですね。たとえば、ハワイ王朝が崩壊する直前、兄であるカラカウア大王がサンフランシスコで客死され、その同じ年には最愛の夫も亡くされているのですが...
──大切な人が2人も亡くなり、さらに王朝も倒れ...つらすぎます!
その時にどんなお気持ちだったのかと考えると、なんだか、常人を超えているなと思うんです。つらいことがありながらも、79歳で亡くなるまで、生涯をまっとうされたことが本当に素晴らしく...。そんな女王の経てきた歴史とさまざまな思い、そして慈愛が、美しい音楽となって結晶していると思うんですね。
──なるほど...なんというか、すごすぎて容易にコメントできません。
それらの楽曲というのは、当時の音源は残っていなくて、楽譜しかない状態なんですね。なかでも何曲かはハワイの定番ソングとして、数々のミュージシャンがカバーしていますが、多くの曲は演奏されず、知らない人がほとんどだと思います。
今回のアルバムでCHIYOさんが選んだ曲には、「これまで知らなかった女王の曲」がたくさん含まれているんですよ。私も音で聴くのは初めてのものが多くて、「こういう曲だったのか...!」と、感動しました。
──CHIYOさんのピアノで、現代にふたたび命を吹きこまれたんですね。
女王が残された楽譜には主旋律(メロディ)しかなく、8小節ほどの短いものもあるので、それをたとえば4分ほどのピアノ曲にアレンジするのは、楽しくも難しかったです。
女王が作曲された9曲からインスパイアされて、CHIYOさんがオリジナルな部分も加えながらアレンジしたものなので、ある意味いちから作曲するのと同じか、それ以上のパワーと音楽力が必要だったと思います。
レコーディングには、ベーゼンドルファーのグランドピアノが使用された。
──160曲もの中から、9曲を選ぶのも大変だったと思うのですが、どうやって選曲したんですか?
歴史的、年代的なことなどを一切抜きにして、純粋に楽曲として私がやりたいと思ったものを選びました。
「CHIYOさんはどんな曲を選ぶのかな」と思ったら、女王がまだプリンセスだった1860・70年代の、乙女でのびのびとされていた時代の曲が多いんですね。また面白いなと思ったのが、雨音を表現している曲が多いんです。さすがピアニストだなと思いました。
とくに雨が好きってわけでもないのですが(笑)。音で選んだら、たまたまそうなりました。
世の中が変わっても、雨音はきっと、女王が生きていた当時も今も同じですよね。CHIYOさんのアレンジで蘇った曲は、女王が奏でたものとは別の楽曲ではありますが、でもきっとそこには、同じ雨音を表現しようとした想いが宿っていると思います。
──時代を経て奏でられる雨音。ハワイの自然に思いを馳せつつ聴きたいです。
そしてアルバムに入っている最後の1曲「Eternity」は、CHIYOさんによる完全オリジナルなのですが、これがね、すごくいいんですよ。ロングバージョンですが、思いが詰まっていて。
短く収まりきらなくて(笑)。6分になってしまいました。ちょっと長すぎたかな?
ラジオでかけるには、曲の長さとしては少しつらいのですが...でもぜひ聴いてください。本当に素晴らしいので。CHIYOさんにとっては、女王の曲に並ぶ1曲を作るということで、ものすごいプレッシャーだったと思います。
──後世に残る一枚ですね。今日はどうもありがとうございました!
録音技師のゲイロード・ホロマリアさん(左)は、ハワイの人気バンド「カラパナ」のキーボーディストとしても活躍するミュージシャン。
ピアニストCHIYOさんの真骨頂「エタニティー」は、ウエブ通販「アロハストリート・セレクト」にて絶賛発売中です! (アルバムの詳細・購入はこちら>>)
またハワイではハイアット・リージェンシー・ワイキキ3階のスタジオ・リム・ハワイ、日本ではアロハストリート・ショップ(横浜店・茅ヶ崎店)でも販売されていますので、お近くの方は、ぜひ店頭でお手に取ってみてください。ジャケットのデザインも素晴らしいので!
さて次回は、CHIYOさんのロングインタビューを敢行。5年ぶりとなる渾身の一枚「エタニティー」の製作秘話に迫ります。ぜひお楽しみに〜!